「TOY'S BOX 470H」のリチウムイオンバッテリー化
以下の記事でも書いたように「TOY'S BOX 470H」の標準サブバッテリーは、「POWERSONIC PS-121000」という鉛バッテリーです。
最近は、キャンピングカーのサブバッテリーにリチウムイオンバッテリーが採用されることが多くなってきました。
しかし、トイファクトリーさんのオプションには、「TOY'S BOX 470H」のサブバッテリーを標準の鉛バッテリーからリチウムイオンバッテリーに置き換える設定がありません。
今後もトイファクトリーさんからは、「TOY'S BOX 470H」に対し、リチウムイオンバッテリーのオプションが設定されることはないと思います。
「キャンピングカーの快適さは、停車中にいかに自由に電気を使えるか次第」
なので、この記事では、独自に「TOY'S BOX 470H」のリチウムイオンバッテリー化を考えてみます。
最初に結論
最初に結論を言うと、私の場合は、以下の順序でリチウムイオンバッテリー化を進めようと思います。
- 標準のサブバッテリー(鉛バッテリー)を自己責任でリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える。
- その後、「EcoFlow DELTA 2 Max」を追加購入し、使える電気容量を増やす。
私がこう考えた理由を知りたい方は、ちょっと込み入った話になりますが、この後の内容を読んでください。
再び「トイファクトリー 湘南」へ
「TOY'S BOX 470H」を注文してから5ヵ月が経ち、最終の仕様打ち合わせの時期になりました。
再度、「トイファクトリー 湘南」へ行ったついでに、展示車を確認させてもらい、バッテリー環境の強化策を考えます。
「TOY'S BOX 470H」の電装室
まずは、展示車の「TOY'S BOX 470H」の電装室を見てみます。
電装室の扉を開けても、電装機器のすべての配線は見えませんでした。
以下の写真からすると、オルタネーター、「ディストロボックス」、サブバッテリー、インバーターが、家具の隙間をうまく使ってシンプルに配線されているようです。
サブバッテリーの横に見える、カラフルなヒューズがたくさん付いているコントローラーは、イタリアの「CBE社」の製品で、トイファクトリーさんは「ディストロボックス」と呼んでいます。
「ディストロボックス」は、トイファクトリーさんオリジナルの「ディストロシステム」を構成する電装部品の一つです。
「ディストロシステム」は、トイファクトリーさんのキャンピングカーの装備を示すアイコンで、以下のように説明されています。
「CBE社」は、キャンピングカーの電装システムなどの開発/設計/製造を請け負っているようなので、トイファクトリーさんのキャンピングカーの特徴である「オールインフォメーションボード」も含めて、トイファクトリーさんから委託を受けて作っている「CBE社」のカスタムシステムだと思われます。
「CBE社」のカスタマー紹介のページにもトイファクトリーさんのロゴがあります。
インバーターは、株式会社未来舎さんの「PowerTite」が採用されています。
私は、1,500Wのインバーターを選択しましたが、展示車のインバーターは、350Wのものが取り付けられていました。
サブバッテリーをリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える案
まず考えられるのが、「TOY'S BOX 470H」の標準サブバッテリー「POWERSONIC PS-121000」を、自己責任でリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える案です。
最近は、比較的安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)のサブバッテリーが簡単に入手できるようになりました。
ただし、リチウムイオンバッテリーを低温下で充電すると、リチウム金属析出が起こり内部短絡する危険性があります。
キャンピングカーの場合、5℃を下回る環境で停車/走行することも頻繁にあるので、この点は要注意です。
なので、私ならヒーター機能を備えたタイプを選びます。
また、同じ100Ahの容量のものであれば、「POWERSONIC PS-121000」とほぼ同サイズのリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーもあります。
おそらく、「TOY'S BOX 470H」の電装室にも入るはずです。
候補になるのは、以下の「RENOGY」製、「LiTime」製のリチウムイオンサブバッテリーです。
充電パラメーターの差分に注意
「POWERSONIC PS-121000」をリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)のサブバッテリーに置き換える作業は、サブバッテリーの「+/-」の電極のケーブルを繋ぎ変えるだけなので、難易度は、それほど高くありません。
ただし、鉛バッテリーとリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーの充電パラメーターには、以下のようなものがあり、バッテリーの種類やメーカーによって値が異なります。
- バルク充電電流(定電流充電電流)
- アブソーブ充電電圧(定電圧充電電圧)
- フローティング充電電圧
上記の充電パラメーターのことを理解しないで、安易に鉛バッテリーをリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換えるのは要注意です。
充電電流が、鉛バッテリーよりも増えることで、「ディストロボックス」の保護回路が働いたり、ヒューズが切れたりする可能性もあります。
また、一見正常に充電できているように見えても、満充電にならなかったり、リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーの性能を十分に発揮できない可能性もあります。
「ディストロボックス」の働き
上記のサブバッテリーの充電パラメーターを確認する上でも、トイファクトリーさんの電装システムを考える上でも、「ディストロボックス」は避けて通れません。
まずは、この「ディストロボックス」がどのような働きをしているのか調べてみました。
先にも説明したように「ディストロボックス」は、トイファクトリーさんの呼称です。
「CBE社」の標準的な英語の名称は「Distribution Box」と言うようで、直訳すると「配電ボックス」といった意味でしょうか。最新の型番は「DS300」です。
ネット上に「DS300」のマニュアル(全ページではなく一部のページを抜粋したもの)もありました。
ただし、トイファクトリーさんが採用している「ディストロボックス」が、一般に販売されている「DS300」と同じ仕様のものかどうかはわかりません。
とは言うものの、まずは、「DS300」のマニュアルを手掛かりに、「ディストロボックス」の働きを見ていくことにします
このマニュアルの7ページと8ページ(ページ番号は14と15)を見ると、「DS300」は、
- コントロールパネル(トイファクトリーさんの呼称は「オールインフォメーションボード」)
- 室内灯
- ウォーターポンプ
- FFヒーター
- 冷蔵庫
- ソーラー充電器
- サブバッテリー
などの電装品を接続するためのコネクターやヒューズがワンパッケージに収まったボックスです。
マニュアルの10ページ(ページ番号は33)の下図を見ると、電装システムの全体像がわかります。
また、サブバッテリー(B2)の+端子側には、50Aヒューズが入っています。
さらに、ネット上で「DS300」の内部基板の画像を見つけました。
上の画像の右下の「B1+」端子は、メインバッテリーの+端子に接続します。
また、その隣の「B2+」端子は、サブバッテリーの+端子に接続します。
「B1+」端子と「B2+」端子の間にある、赤の四角枠で囲んだ部品はリレーです。
この画像から、「DS300」の機能を以下のように推測しました。
- サブバッテリーは、「B1+」端子と「B2+」端子の間にあるリレーを介して、メインバッテリーと接続される。
- エンジンキーがオフのときは、このリレーを切り、メインバッテリーとサブバッテリーの間で電流が流れないようにする。
- サブバッテリーの電圧を監視し、一定以上の電圧になったらリレーを切り、サブバッテリーが過充電状態にならないようにする。
ここまでの情報で、オルタネーター、メインバッテリー、「ディストロボックス」、50Aヒューズ、サブバッテリー、インバーターは、下図のように接続されていると考えられます。
※ 画像の電装設備は「TOY'S BOX 470H」で実際に採用されているものとは異なります。
つまり、「DS300」≒「ディストロボックス」は、一般的なアイソレーター(走行充電器)ではなく、メインバッテリーの+端子とサブバッテリーの+端子の接続をオン/オフするスイッチです。
結果、走行中でリレーがオンのとき、サブバッテリーは、メインバッテリーの充電電圧 ≒ オルタネーターの出力電圧12.2V~14.8Vで充電されることになります。
言い換えると、「ディストロボックス」は、リレーをオンすることで、オルタネーターの出力でメインバッテリーとサブバッテリーを同時充電できるように充電電流経路を提供しているだけになります。
上の全体接続図のように、ハイエースのオルタネーターとメインバッテリーの間には、メイン配電回路が入っています。
オルタネーターは、130A程度の電流を出力できる発電能力がありますが、メイン配電回路の出力電流は、30A程度に制限されているようです。
従って、メインバッテリーとサブバッテリーの充電電流は、合計で30Aとなります。
メインバッテリーが満充電状態で、オルタネーターの出力電流が全てサブバッテリー側に流れても、最大電流は30A以下になります。
ここで、「B1+」端子と「B2+」端子の間にあるリレーの表面のシルク印刷を見ると、「70A14VDC」と書かれています。
このリレーには、最大70Aの電流を流すことができますが、サブバッテリーに流れる最大電流は30A以下なので問題ありません。
さらに、サブバッテリーの+端子側に50Aのヒューズが入っていますが、サブバッテリーに流れる最大電流は30A以下なので、このヒューズが切れることはありません。
また、トイファクトリーさんからは、
「サブバッテリーの仕様上、流せる充電電流は30Aまで」
と聞きましたが、正しくは、
「メイン配電回路の出力電流の上限は30Aなので、サブバッテリーに流せる充電電流は30Aまで」
という意味だと理解しています。
オルタネーターからサブバッテリーまでの配線ケーブルの許容電流
もう一つ注意すべきことがあります。
それは、オルタネーターからサブバッテリーまでの配線ケーブルの許容電流です。
鉛バッテリーに比べ、リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーは、充電電流/放電電流を増やすことができます。
走行時にサブバッテリーを充電する場合、充電電流を増やすことができれば、充電時間を短縮することができるので、この点は、リチウムイオンバッテリーの大きな優位点です。
ところが、充電電流を増やせるということは、
オルタネーター → サブバッテリー
に流れる電流が増えるということです。
※ 画像の電装設備は「TOY'S BOX 470H」で実際に採用されているものとは異なります。
この一連の経路の電流が、それぞれの電装部品を接続している配線ケーブルの許容電流を超えると発熱し、最悪、発火します。
今回の場合、メイン配電回路の出力電流は、30A程度に制限されているので、配線ケーブルの許容電流を超えることはないと考えますが、念のため、トイファクトリーさんに確認したところ、
「配線の仕様としては125A程度に耐えうる配線を使用している」
とのことでした。
この配線ケーブルの許容電流は、必ず現物で確認が必要です。
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える案のまとめ
推測も含めて、ここまで考察してきた「ディストロボックス」の充電機能を基に、「POWERSONIC PS-121000」をリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換え可能か考えます。
充電電圧
オルタネーターの出力電圧12.2V~14.8Vで充電可能か?
Renogy 12V 100Ah LiFePO4リチウムイオンバッテリーの充電電圧スペックは、
14.4V
LiTime 12V 100Ahヒーター付 LiFePO4リチウムバッテリーの充電電圧スペックは、
14.4V±0.2V
オルタネーターの電圧が、14.4Vを下回るタイミングでは充電できない可能性があり、結果、満充電できなかったり、充電時間が長くなったりする可能性がある。
やはり、この充電電圧(サブバッテリーの「+」端子の電圧)が一番のポイント。充電電圧が常時14.4Vを下回っている場合、リチウムイオンバッテリーの充電はできない。
キャンピングカーが納車されたら、サブバッテリーの「+」端子を外し、50Aヒューズのサブバッテリー側の電圧を測定する。
逆に、オルタネーターの出力電圧がリチウムイオンバッテリーの充電電圧の上限を超えた場合は、リチウムイオンバッテリーのBMS(バッテリーマネジメントシステム)が充電をオフするので、安全性は担保されるはず。
過充電保護電圧
サブバッテリーの電圧が何V以上になると「ディストロボックス」がリレーをオフするか不明。
ただし、「POWERSONIC PS-121000」のアブソーブ充電電圧(定電圧充電電圧)は、14.1V~14.7Vなので、14.7V以下の電圧でリレーをオフすることはないと考えられる。
Renogy、LiTimeとも、充電電圧は14.4Vなので、満充電になる前に過充電保護が働いてリレーがオフになることは無さそう。
充電電流
充電電流は、メイン配電回路の出力電流30Aで制限されている。
Renogy 12V 100Ah LiFePO4リチウムイオンバッテリーの最大連続充電電流スペックは、
100A
LiTime 12V 100Ahヒーター付 LiFePO4リチウムバッテリーの推奨充電電流スペックは、
20A
Renogyの100AとLiTimeの20Aの数字だけ見ると、Renogyのスペックの方が高いように見える。
しかし、Renogyは最大充電電流の値、LiTimeは標準の推奨充電電流の値を記載しているので、両者の性能差はほとんどないと考えてよい。
メイン配電回路の出力電流30Aは、LiTimeの推奨充電電流スペックの20Aを超えてしまうが、以下のとおり、充電電流の上限目安1Cに対し十分小さいので問題なしと判断する。
充電電流:30A / 電流容量:100Ah = 0.3C < 1C
RenogyもLiTimeも、最大充電電流の目安1C = 100Aで考えると、もう少し充電電流を増やして、充電時間を短縮したいところだが、メイン配電回路の出力電流が30Aに制限されているのは残念なところ。
放電下限電圧
サブバッテリーの電圧が何V以下になると「ディストロボックス」が放電を停止するか不明。
この放電下限電圧が高いと、リチウムイオンバッテリーに充電した電力が使い切れない可能性がある。
配線の許容電流
私が購入予定の「TOY'S BOX 470H」で1,500Wのインバーターのオプションを選択した場合、
「配線の仕様としては125A程度に耐えうる配線を使用している」
とのこと。メイン配電回路の出力電流が30Aで制限されてるので問題なし。
(配線の許容電流は、キャンピングカーやオプションごとに異なるので、個別に確認が必要。)
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)のサブバッテリー側には、BMS(バッテリーマネジメントシステム)が搭載されている場合が多く、バッテリーが危険な状態になることを回避してくれるはずです。
なので、「ディストロボックス」にリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリを直接接続して充放電しても、火災など安全面のリスクは少ないと考えられます。
また、このBMS(バッテリーマネジメントシステム)が、
- バルク充電電流(定電流充電電流)
- アブソーブ充電電圧(定電圧充電電圧)
- フローティング充電電圧
の充電パラメーターを制御してくれるので、「ディストロボックス」がメインバッテリーとサブバッテリーの同時充電経路を提供するだけだとしても、リチウムイオンバッテリーに対して、より適した充電が行われるはずです。
一方、
- オルタネーターの出力電圧が低い場合は、満充電できなかったり、充電時間が長くなる可能性がある
- 「ディストロボックス」がサブバッテリーの放電を止める電圧が高い場合、サブバッテリーに充電した電力をぎりぎりまで使い切れない可能性がある
など、リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリの性能を最大限に引き出せない可能性もあります。
とは言うものの、鉛バッテリーをリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える案は、
- 同じ電流容量(例えば100Ah)であっても、実際に使える電力が2倍近くに増える。
- 放電電流が増やせるので、1,500Wインバーターの能力を最大限生かせる。
- 充電電流が30Aに制限されているものの、鉛バッテリーに比べて充電時間を短縮できる可能性がある。
- この後で説明するポータブルバッテリーよりもコストパフォーマンスが良い。
など、メリットも多く、是非とも検討したい案です。
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換え可能か?の結論
既存の電装設備を十分に確認してから、置き換えを検討すること!
一番の確認ポイントは、充電電圧がリチウムイオンバッテリーを十分に充電可能な電圧(14.4V)より高いかどうか?
安全面でのリスクは、高くなさそう。(あくまで自己責任)
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーの性能を最大限引き出せないかも?
トータルで考えると、リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーへの置き換えは、トライする価値あり!
ポータブルバッテリーを使う案
そもそも、「TOY'S BOX 470H」の標準サブバッテリーの電流容量は、100Ahです。
電圧12Vで計算すると、
100Ah × 12V = 1,200Wh = 1,200W × 1時間
の電力容量になります。
計算上は、1,200Wの家電が1時間使えます。
しかし、鉛バッテリーの場合、1,200Wの電力(100Aの電流)を取り出すと急激に電圧が下がり、かつ、10V近くまで電圧が下がると電力を取り出せなくなるので、実際は、20分から30分程度しか使えないと思います。
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーの場合、1,200Wの電力(100Aの電流)を取り出しても、鉛バッテリーほど電圧が急激に下がることはありません。
なので、鉛バッテリーに比べて、取り出せる電力量が増え、1,200Wの家電を50分くらい稼働させられる可能性があります。
とは言え、リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)のサブバッテリーに置き換えても、100Ahの電流容量(1,200Whの電力容量)は、少し貧弱です。
一回り大きい200Ahの電流容量のリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーもありますが、サイズが大きくなり、「TOY'S BOX 470H」の電装室には入りません。
「EcoFlow DELTA 2 Max」はどうか?
どうせ電装室に収まらないのであれば、2,000Whクラスのポータブル電源を使うのはどうでしょうか?
私が候補に挙げたのは、以下の「EcoFlow DELTA 2 Max」です。
「EcoFlow DELTA 2 Max」の特徴を挙げます。
- リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーを採用
- 電力容量 2,048Wh
- 定格出力 2,000W(最大出力 2,400W)
- 最大充電電力 1,500W
- 重量 約23Kg
- サイズ 49.7 × 24.2 × 30.5 cm
一番の注目ポイントは充電電力
上に挙げた特徴のうち、私が一番注目したポイントは、充電電力です。
「最大充電電力 1,500W」とありますが、YouTubeにアップされている実際の充電時の動画を見ても、1,300Wくらいで充電しています。
満充電に近づくと、徐々に充電電力は下がっていくので、単純に充電時間を計算することはできませんが、「EcoFlow DELTA 2 Max」のページでは、
- AC充電 80%まで84分
- AC充電 100%まで101分
と書かれています。
走行充電の時間は?
家庭のAC100Vコンセントに繋いだ場合は、上記の時間で充電できます。
ただし、私は、キャンピングカーで旅をする途中で充電したいわけです。
「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」の番組のように、見ず知らずのお宅に行って、ポータブルバッテリーを充電させてもらうわけにはいきません。
やばいよ、やばいよ
そこで、走行時の充電時間について考えることにします。
私は、「TOY'S BOX 470H」のオプションで、1,500Wインバーターを選択しました。
なので、この1,500Wインバーターの出力のACコンセントからAC充電をすれば、家庭のAC100Vコンセントに繋いだ場合と同等の充電時間が達成できるかもしれません。
つまり、この充電時間が達成できれば、「2時間ほど車を走らせれば、ほぼ満充電にできる」ということです。
1,500Wの急速充電に耐えられるのか?
「EcoFlow DELTA 2 Max」の最大充電電力は、1,500Wです。
一番の懸念は、1,500Wの充電に「TOY'S BOX 470H」の電装設備や配線ケーブルが耐えられるのか? という点です。
この最大充電電力で充電されるケースやタイミングは限られていると思いますが、まずは、1,500Wの最大充電電力の際に、安全性の問題が発生しないのか検証します。
検証のポイントは、大きく以下の4点です。
- オルタネーターの出力電流
- インバーターの許容出力
- インバーターに接続される配線ケーブルの許容電流
最大電流の計算
最初に、インバーターから1,500Wの電力を引き出した場合、インバーターに流れるDC12Vの電流を計算します。
1,500W / 12V = 125A
インバーターの効率は、100%ではないので、その分、電流は増えるはず。
一方、インバーターに供給される電圧も12Vよりは高いはずなので、その分、電流は減るはず。
それぞれ相殺して、125Aで考えておくことにします。
オルタネーターの出力電流
まず、ベース車両のハイエースのオルタネーターの電流スペックを調べてみました。
ハイエースのノーマルのオルタネーターは、最大130Aの電流を流せるみたいですが、すでに説明したように、オルタネーターの後に接続されるメイン配電回路で、出力電流が30A程度に制限されています。
インバーターの許容出力
インバーターは、出力1,500Wのものを選択したので問題なし。
ただし、瞬間的に1,500Wを超える電力を引いた場合は、保護回路が働く場合があるようです。
配線ケーブルの許容電流
最後に、
オルタネーター → インバーター
サブバッテリー → インバーター
の配線ケーブルの許容電流を確認します。
125A程度の電流を流すには、22sq(22スクエア)程度の太さの配線ケーブルを使う必要があります。
この点をトイファクトリーの営業担当のNさんに、メールと電話で確認しました。
技術の方にも確認してもらった結果、
「配線の仕様としては125A程度に耐えうる配線を使用している」
「エンジンを稼働している/していないに関わらず、インバーターで1,500Wの出力は可能」
との回答をもらいました(納車後に現物確認が必要)。
「走行中でも、インバーターは1,500Wの出力が可能」ということは、インバーターには、125Aの電流が流れます。ただ、この電流のほとんどは、サブバッテリーから供給され、残りの足りない電流が、下図の
オルタネーター → メイン配電回路 → 「ディストロボックス」 → 50Aヒューズ → インバーター
の経路で補われます。
※ 画像の電装設備は「TOY'S BOX 470H」で実際に採用されているものとは異なります。
しかし、サブバッテリーの容量が無くなってきたら、最終的には、メイン配電回路の出力電流30Aで電流制限がかかるので、この時点で、インバーターの1,500Wの出力を継続することはできなくなります。
結果は、以下のとおり問題なしです。
- サブバッテリー → インバーターの経路には125Aの電流が流れることがある。
この電流経路には125A程度に耐えうる配線を使っているので問題なし。 - オルタネーター → メイン配電回路 → 「ディストロボックス」 → 50Aヒューズ → インバーターの経路には最大30Aの電流しか流れない。
配線の許容電流を超えないので問題なし。
「EcoFlow DELTA 2 Max」案のまとめ
上記の検証のように、走行中に「EcoFlow DELTA 2 Max」を1,500Wで充電した場合、一番気になるのは、サブバッテリーの充電状態です。
インバーターに流れる最大電流125Aのうち、ほとんどが、サブバッテリーから供給されるのであれば、サブバッテリーの容量が十分にある間は大丈夫そうですが、サブバッテリーから十分な電流が供給できなくなると、メイン配電回路の出力電流制限30Aのため、インバーターが停止しそうです。
「TOY'S BOX 470H」に搭載した1,500WインバーターのACコンセントに「EcoFlow DELTA 2 Max」を繋いでAC充電(走行充電)しても、安全面の問題はなさそうですが、高速充電のメリットは得られません。
この高速充電については、断念することにします。
一方、「EcoFlow DELTA 2 Max」の高さは30.5cmなので、「TOY'S BOX 470H」の後部座席の下に置くことができます。
また、ポータブルバッテリーは、その名前のとおりどこにでも持ち運びできる利便性もあります。
なので、「EcoFlow DELTA 2 Max」も、いずれは導入したいです。
まとめ
「TOY'S BOX 470H」の標準サブバッテリーは、鉛バッテリーです。
このサブバッテリーの環境を強化するために、
- 鉛サブバッテリーをリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える。
- 「EcoFlow DELTA 2 Max」を導入し、「TOY'S BOX 470H」のオプションで選択した1,500WのインバーターのAC出力で、走行中にAC充電する。
2つの案を考えました。
メイン配電回路の出力電流が30Aに制限されているものの、1つ目の鉛サブバッテリーを充電レート/放電レートの高いリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える案は、充電時間が多少でも短縮したり、実際に使える電力が増えたりするなどのメリットはありそうです。
2つ目の「EcoFlow DELTA 2 Max」の1,500W充電の案は、同じく、メイン配電回路の出力電流制限30Aによって、走行充電時間を劇的に短縮するメリットは得られません。
「TOY'S BOX 470H」が納車されたら、まずは、鉛バッテリーの使い勝手を確認します。
その結果、もう少し使える電力を増やしたい、多少なりとも充電時間を短縮したいなどの欲求が出てきたら、まずは、コストパフォーマンスの良い、リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える案を検討したいと思います。
冒頭に書いたように、私の場合は、以下の順序でリチウムイオンバッテリー化を進めようと思います。
- 標準のサブバッテリー(鉛バッテリー)を自己責任で標準のリン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーに置き換える。
- その後、「EcoFlow DELTA 2 Max」を追加購入し、使える電気容量を増やす。
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