ばんえい記念、再び
ばんえい記念のレースを初めて観たのは2年前。
各馬、ハンデキャップなしで1トンの重さのソリを引く真剣勝負に胸が熱くなりました。
そのときの感動が忘れられず、再び、ばんえい記念にやってきました。
しかし、今年のばんえい記念は、レース中に事故があり、名馬ニュータカラコマが死亡してしまいました。
このページの冒頭の写真は、トップを切って第2障害を攻めに行った、ニュータカラコマの雄姿です。
ゴールの先の夕日をしっかりと見つめている瞳が印象的です。
パドック
パドックの様子です。
ばんえい記念2016の優勝馬、フジダイビクトリー。
このレース1番人気のオレノココロ。
昨年に続き、ばんえい記念2連覇を目指します。
たまたま、パドック横で騎手の藤野さんがニュータカラコマに馬具を付け、これから背中に股がる前の写真も見つかりました。
ゲートに向かうニュータカラコマ。
第2障害を最初に越えて、レースを引っ張ることになるコウシュハウンカイ。
ファンファーレ
いよいよ、レース開始の時刻が迫ってきました。
ばんえい記念では、陸上自衛隊第5音楽隊が出走前のファンファーレを生演奏します。
この生ファンファーレも大人気です。
レースの様子
ここからは、レースの様子です。
動画で見たい方はこちら。
また、直線200mのレースコースの全体は、「ばんえい十勝」のホームページに紹介があります。
スタート
ゲートが開き、各馬一斉にスタートしました。
第1障害
第1障害を越えます。
他の馬が難なく第1障害を乗り越えられたところ、ニュータカラコマだけ、第1障害の頂上で足が止まり、苦戦していました。
すでに、この時から調子が悪かったのかも知れません。
各馬、第1障害をクリアしました。
今日は天気も良く、馬場の水分も0.9%と乾いています。
ばんえい競馬は、重いソリを引いてレースをするため、水分が少ない方が重馬場になります。
各馬、ジリジリと歩を進めて行きます。
この辺りでは、ニュータカラコマもいいポジションをキープしていました。
第2障害
第2障害の手前までやって来ました。
最大の難関、第2障害に備えて、各馬息を整えます。
一番最初に仕掛けたのは、ニュータカラコマでした。
しかし、ニュータカラコマは、第2障害を登りきれず、頂上に近いところで足が止まってしまいました。
続いてのチャレンジは、コウシュハウンカイ。
それを見て、各馬、一斉に仕掛けます。
コウシュハウンカイ、登りきれるか?
最初に登りきったのは、コウシュハウンカイでした。
コウシュハウンカイ、そのままトップで第2障害をクリアしました。
第2障害をトップでクリアしたコウシュハウンカイ、このリードを守ってゴールしたいところ。
続いて、フジダイビクトリーとオレノココロが第2障害をクリア。
ゴール手前のデッドヒート
第2障害を降りて、ゴールまでは60m。
ゴール前30mの地点で、コウシュハウンカイは、約20mリードしています。
コウシュハウンカイを追う、2番手のフジダイビクトリー。
ばんえい記念2連覇を目指す、オレノココロが3番手。
オレノココロが2番手に上がってきました。
オレノココロが、トップのコウシュハウンカイにも迫ってきます。
オレノココロが、コウシュハウンカイと並びます。
フジダイビクトリーもトップの2頭に迫っています。
ついに、オレノココロがトップに立ちました。
足を止め力を貯めていたコウシュハウンカイが、再び追いつきます。
オレノココロとコウシュハウンカイが並んで足を止めているところに、フジダイビクトリーが追いついてきました。
ゴール手前10mのところで、3頭の接戦になります。
オレノココロが一瞬先に動き出し、コウシュハウンカイも負けじと続きます。
このまま、オレノココロがゴールするのか?
ゴール直前で、オレノココロの足が止まります。
その間に、フジダイビクトリーがゴールに迫ります。
ゴール
ばんえい競馬は、人馬一体で北海道を開拓した歴史から、馬がソリを引くレースです。
なので、ゴールは馬の鼻先で決めるのではなく、ソリの後端がゴールラインを通過した時点で決まります。
オレノココロがトップでゴールし、ばんえい記念2連覇を達成しました。
2着は、フジダイビクトリー。
第2障害からレースを引っ張ってきたコウシュハウンカイは、3着でした。
上位3頭の接戦は見応えがありました。
ばんえい記念2018の結果はこちらから。
実は、この記事、ばんえい記念2018年のレースから1年経った、2019年3月24日に書いています。
この記事を書いている本日は、ばんえい記念2019(第51回ばんえい記念)が開催される日です。
このレースを最後に、フジダイビクトリーも引退するそうです。
ニュータカラコマの事故
記事を書くまでに1年経ったのは、このレースでニュータカラコマが死亡する事故があったからです。
ニュータカラコマの事故については、私の見たまま書くことにします。
各馬がゴールする中、ニュータカラコマは、ゴール手前20mの辺りで足が止まっていました。
足を進めようとして、機種の藤野さんが2回手綱を引きました。
ニュータカラコマが、1歩足を出そうとした瞬間、大きな体が横向きに倒れました。
ただならぬニュータカラコマの気配に、ソリから降りた藤野さんは、しばらく立ちすくんでいるように見えました。
ニュータカラコマの転倒を目の当たりにしていたホクショウユウキが、その横を通りゴールへ向かいます。
藤野さんは、ニュータカラコマの背中側に回って、ソリの留め具を外し始めました。
その後、藤野さんは、ニュータカラコマの頭の側に行き、首に付いた馬具を外し始めました。
馬具を外しながら、ニュータカラコマに何か話しかけているようにも見えました。
電光掲示板には、先ほどの着順が空しく表示されています。
私の隣で見ていた地元のおじいさんが言った、
「まじめな馬は、死ぬまで走っちゃうんだよ。」
という言葉が、この土地の人と馬の関係を表しているようで、胸に響きました。
藤野さんは、全ての馬具を外し終えた後、すでに息絶えているように見えるニュータカラコマに別れを告げて、厩舎の方へ戻っていきました。
その後、ニュータカラコマは、ビニールシートで覆われて、トラクターで厩舎の方へ運ばれていきました。
以上がニュータカラコマの事故の顛末です。
ばんえい競馬について思う
この記事を書いている今日、遠い「ばんえい十勝」の競馬場では、第51回目を迎えるばんえい記念のレースが開催され、また、新たなドラマが生まれることでしょう。
一方、ニュータカラコマの事故に限らず、重いソリを引いて走るばんえい競馬に対しては、動物虐待などの批判が寄せられていることも事実です。
ただ、いろいろな季節に何度も十勝周辺を訪れていると、この地で長く生きてきた人でないと理解できないことがあるように感じます。
ばんえい競馬が置かれている状況やばん馬生産の環境については、テレビ北海道が制作し2017年5月13日に放送した「けいざいナビ HOKKAIDO」の特集が、YouTubeにアップされています。
わかりやすくまとまっていますので、是非ご覧になって、皆さんそれぞれで考えてみてください。
ニュータカラコマの雄姿
ニュータカラコマの事故の後、しばらくして、澤田さんという方からメッセージを頂きました。
「今年は追悼の意もかねてタカラコマを描きたいと思っていました。
アレンジをするのでそのまま使用するわけではないのですが、ここで掲載されているタカラコマの第二障害の写真を参考にさせていただいてもいいでしょうか?」
それが、ばんえい記念2016で、ニュータカラコマがトップで第2障害をクリアした時のこの写真。
この写真をモチーフに、ニュータカラコマの雄姿を以下の絵にされました。
この絵を描かれた澤田さんの個展が、今年は、「ばんえい十勝」のばん馬ギャラリーで開催されるそうです。
澤田さんの絵を観た方々が、ニュータカラコマや十勝で生きるばん馬に思いを馳せてくれることを願っています。
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