「志望理由書」で悩んだら時間を逆向きに考える
以下の記事でも書いたように、「志望理由書」を書くのは意外と難しいです。
自分が大学進学をめざす理由そのものが「志望理由書」ですが、大学進学の意義がよくわからなくなったときは、時間を逆向きに考えてみましょう。
時間を逆向きに考えるとは?
時間は、
「過去」⇒「現在」⇒「未来」
の方向に流れます。
なので、普通は、物事をこの方向で見ることの方が多いと思います。
時間を逆向きに考えるということは、同じ物事を
「未来」⇒「現在」⇒「過去」
の方向で見てみるということです。
例を挙げてみます
「過去」⇒「現在」⇒「未来」の方向
まずは、普通に、「過去」⇒「現在」⇒「未来」の方向で書いてみます。
「過去」:私は子供の頃からお菓子や料理を作るのが大好きでした。私の作ったお菓子や料理を美味しそうに食べてくれる家族の笑顔は、今でも忘れられません。
「現在」:なので、農業高校の食品科に進み、食品加工の勉強をしています。今は、研究プロジェクトのリーダとして、発酵食品の風味改善に取り組んでいます。
「未来」:研究プロジェクトで興味を持った発酵食品のことをより深く学ぶため、大学に進学し、発酵学、醸造学を通して、食品発酵のメカニズムを理解したいです。また、原料に用いられる食品の生態なども学びたいです。
「未来」:大学卒業後は、発酵食品メーカの研究部門で働きたいです。
「まとめ」:美味しく安全な食べ物を提供し、たくさんの人を幸せにすることで世の中に貢献したいです。これが、貴校を志望する理由です。
「未来」⇒「現在」⇒「過去」の方向
次に、時間を逆向きに、「未来」⇒「現在」⇒「過去」の方向に変えてみます。
「未来」:将来は、発酵食品メーカの研究部門で働きたいです。
「未来」:より美味しく品質の高い発酵食品を開発するためには、発酵学、醸造学を通して、食品発酵のメカニズムを学ぶだけでなく、原料に用いられる食品の生態など、幅広い知識、スキルを身に着ける必要があります。
「現在」:今は、農業高校の食品科で食品加工の勉強をしていますが、現在、自らがリーダとして取り組んでいる、発酵食品の風味改善の研究プロジェクトをしっかりまとめ上げることが当面の課題です。
「過去」:私は子供の頃からお菓子や料理を作るのが大好きでした。私の作ったお菓子や料理を美味しそうに食べてくれる家族の笑顔は、今でも忘れられません。
「まとめ」:美味しく安全な食べ物を提供し、たくさんの人を幸せにすることで世の中に貢献したいです。これが、貴校を志望する理由です。
それぞれの特徴
それぞれの特徴をまとめてみます。
「過去」⇒「現在」⇒「未来」の方向
- 「私は、~したい」の文章になりやすい。
- 自分のやりたいことが主体の文章になるので、「天真爛漫」な感じがする。
一方、「子供っぽい」印象にもなる。 - ストレートでわかりやすくインパクトがある。
- 大学進学の意味を、現在の延長線上で捉える。
⇒ 大学の正門を「入学式」のときに眺めているイメージ。
「未来」⇒「現在」⇒「過去」の方向
- 「私は、~すべき」の文章になりやすい。
- 自分の役割や課題が主体の文章になるので、「堅苦しい」感じがする。
一方、「大人っぽい」文章になる。 - 自己都合より社会的な役割から捉えた文章にしやすい。
- 大学進学の意味を、将来に必要な準備として捉える。
⇒ 大学の正門を「卒業式」のときに眺めているイメージ。
まとめ
どちらが良いとか悪いとかの話ではありません。
それぞれの特徴や文章から感じられる印象を使い分けて、文章全体のバランスを見ながら「志望理由書」を書いてみてください。
時間を逆向きに、「未来」⇒「現在」⇒「過去」の方向で自分の進路を見た場合、"起点"が「未来」になります。
つまり、「将来なりたいもの」や「夢」から始まります。
試しに、「将来なりたいもの」や「夢」をがらりと変えてみて、文章を書いてみるのも良いトライだと思います。
例えば、今回の例の「発酵食品メーカの研究部門で働く」を「地産の小麦や食材を活用したパン屋を起業する」に変えてみたら、大学で学ぶべきことはどうなるでしょうか?
「大学に進学して、自分は何を学ぶのか?」
にとどまらず、
「大学進学を選択することが、自分の進路に本当にふさわしいのか?」
を見直すきっかけになるかもしれません。
一番大切なのは、「将来なりたいもの」や「夢」です。
「志望理由書」は、現時点の自分が描く「将来のシナリオ ≒ 将来の物語り」みたいなものです。
来年になったら、その「シナリオ ≒ 物語り」は、がらりと変わっているかもしれませんし、変えても構いません。
なので、あまり堅苦しく考えず、この"起点"をドラスティックに変えてみて、いくつかの「シナリオ ≒ 物語り」を試し書きしてみてください。
大学に提出する「志望理由書」は、出来上がった「シナリオ ≒ 物語り」の中から、話の展開が面白くて、自分が一番ワクワクするものを選んで提出するくらいで、ちょうどいいかもしれません。
実際の面接ではリアルタイムの口頭でのやりとりになるので、両者の特徴や使い分けを考える余裕はないと思いますが、事前に面接の想定練習をしておくときも、同様の考え方が応用できると思います。
お薦めの書籍
後日、以下の「まんがでわかる 理科系の作文技術」を読みました。
以下の書籍を読む方と,文章を書く上でのポイントがよりしっかり理解できると思います。
ストーリー仕立てのまんがなので読みやすく、2時間かからずに読み通せるので、是非とも、読んでおきたい書籍です。
電子書籍版もあります。
オリジナルの書籍は、以下の「理科系の作文技術(中公新書)」です。
100万部を超える名著です。
こちらも、電子書籍版があります。
「農業高校生のお受験体験記」一覧を見る。
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