表やグラフの重要性
上の記事で、O大学の過去の小論文問題を2例挙げました。
さらに、
「2012年実施の試験あたりから、明らかに問題の傾向が変わり、むずかしくなってきた。」
ということも書きました。
結論から先に言うと、最近の小論文問題の傾向として、表やグラフを読み解く力が求められるようになってきています。
これは、O大学に限らず、今後、他の大学の小論文試験でも取り入れられるようになるであろう傾向だと思います。
なぜかと言うと、上の記事で挙げた2例の問題だと、なかなか、小論文試験の点数に差がつきませんが、この後に説明する、表やグラフを使った問題にすると、
「勉強している/していない」
が点数の差として現れやすくなり、大学としては、篩(ふるい)にかけやすくなります。
ということで、今回の記事は、今までの中で、一番むずかしい内容になってしまいました。
何人の人が最後まで読んでくれるか心配です(笑)。
この記事の途中で篩にかけられないよう、最後までがんばって読んでください。
小論文問題
さっそく、25年度の問題を見てみましょう。
25年度
以下の図は、昭和40年、55年、平成21年度の、我が国国民一人一日あたり供給熱量を示したものである。各グラフの横軸は、各食品の自給率(供給熱量ベース)を表し、縦軸は各食品の供給熱量を示している。
食料摂取および食料自給率の変化について、(1)これらの図より読み取れる主な傾向を600字程度で列記し、(2)それをもとに、我が国における食料生産・消費の問題点についてあなたの考えを400字程度で書きなさい。
上のグラフは、以下「農林水産省」のホームページから、おそらく、問題文に一番近いであろうと思われるグラフを引用したものです。
なので、問題文には、"平成21年度"とありますが、引用したグラフでは、"平成23年度"のグラフしかありません。
また、問題文にはない"平成2年度"のグラフも入っています。
この点に注意して見てもらえれば、問題で問われている"主な傾向"は外してないはずです。
量率グラフ
まず、上のグラフは、一般的には「量率グラフ」(面積図、モザイクプロットなどとも呼ばれる)もので、
「量と比率を面積で示すことができる。」
便利なグラフです。
社会人の経験の長い私は、「国別/商品別のシェアや売上」といったビジネス状況などを表すグラフとしてよく目にしますが、一方、初めて見る人は、ちょっと見方に悩むかもしれません。
しかも、この「量率グラフ」が、横方向に4つ(問題文だと3つ)並んでいて、時間軸の傾向性も読み取る必要があります。
ただでさえ緊張している中、小論文試験の問題を開いて、いきなり初めて見る「量率グラフ」が複数並んでいたら、私だったら、ちょっとパニックになります。
主な傾向性
このグラフから読み取れる"主な傾向性"を挙げてみましょう。
なお、ここで言う"自給率"は、"供給熱量(カロリー)ベースの自給率"なので、食品の重さや体積、生産額ではないことにも注意が必要です。
- カロリーベースの自給率は、73% ⇒ 53% ⇒ 48% ⇒ 39% と年々下がってきている。
- 昭和40年度は、必要なカロリーの半分近くを米から摂取していたが、平成23年度の米からの摂取カロリーは、必要カロリーの1/4にまで下がっている。
その米の自給率は、ほぼ100%を維持している。 - 畜産物から摂取するカロリーは、昭和40年度は、必要カロリーの6%(157kcal/2,459kcal)であったが、平成23年度は、16%(396kcal/2,436kcal)と3倍近くに増加している。肉や油脂類を多く食べる、いわゆる"食の欧米化"が進んでいる。
ただし、畜産物の飼料は、海外からの輸入に依存しているため、カロリーベースの実質的な自給率は、47% ⇒ 23% ⇒ 21% ⇒ 16% と年々下がってきている。
まぁ、他にも着目点を変えると、いろいろな傾向性が見て取れますが、とりあえず、こんなところでしょうか。
どうですか?
"主な傾向性"は、読み取れましたか?
食料生産・消費の問題点
次は、上で挙げた"主な傾向性"から、自分の視点で"問題点"を述べます。
私は、以下の"問題点"を挙げてみました。
- せっかく、ほぼ100%の自給率を維持している米を日本人が食べなくなってきている。
トータルの自給率が年々下がる中、減反政策までして、自給率ほぼ100%の米の生産量を抑えるのは、本末転倒な話である。 - "食の欧米化"が進み、今後も食肉の需要は増えていくと考えられるが、一見高く見える畜産物の自給率も、家畜が食べる飼料も考慮すると、実質的な自給率は低い。
経済成長が著しい近隣諸国、特に人口の多い中国でも、今後は、食肉の需要が日本同様に増え、輸入食肉や飼料の奪い合いが始まる可能性が高い。
家畜そのものの国内生産量アップと合わせて、家畜の飼料の自給率も上げていく必要がある。 - トータルで見ると、年々下がっているカロリーベースの自給率は、平成23年度では、39%にまで落ち込んでいる。
もし、異常気象やテロ、戦争といった有事が発生し、食糧の輸入が止まってしまうと、日本国民の安全保障自体が脅かされるほど深刻な状況になっている。
時間と文字数との戦い
グラフから"主な傾向性"を読み取り、自分なりの視点で"問題点"を述べるという、今回の小論文問題はどうでしたか?
さらに、これを、90分の時間内に、600文字+400文字の計1000文字にまとめ上げなければいけません。
ちなみに、「1000文字」というのは、マジックナンバーだそうです。
息子は、自分の書いた小論文の添削を農業高校の国語の先生に何度かお願いしていました。
その、国語の先生曰く、
「難易度の高い大学の小論文試験は、1000文字のところが多いな。」
ということらしいです。
確かに、「1000文字小説」というコンテストもあるくらいですから。
上の記事で書いた、
「書けない人がいっぱいいたみたいで、急きょ試験時間が20分延長された。」
というS先輩の話もうなずけます。
表やグラフに慣れること
ここで取り上げた小論文問題のように、今後は、ますます、表やグラフを読み解く力が求められます。
「食料・農業・農村白書」は、"白書"というだけあって、統計データを簡潔にまとめた表やグラフがぎっしりつまっています。
しかも、その表やグラフが示す意味や内容、そこからわかる傾向性や問題点も一緒に述べられています。
ちなみに、小論文問題のグラフを引用した、以下「農林水産省」のホームページをゆっくり眺めてみてください。
このページは、「我が国の食料自給率の動向」についてまとめられたページですが、このページだけでも、たくさんのグラフや表が並んでいます。
最初は抵抗感があるかもしれませんが、じっくり読んでいくと、実は、さまざまな統計データを簡潔にまとめてくれているのがわかると思います。
ページの前半だけでも、
- 1日1食分の熱量(食料)が無駄になっている
- 日本全体のカロリーベース自給率は、平成23年度では、39%にまで下がっているが、都道府県別に見ると、人口が多く、かつ、人口に見合う食料を生産していない、東京周辺や大阪周辺の大都市圏が足を引っ張っている(当たり前ですが)。
ことなどが、表やグラフを使って説明されています。
要は、慣れですね。
小論文試験で、どんな表やグラフが出てきてもパニくらないように、普段からいろいろな統計データ、表やグラフに慣れ親しんでおきましょう。
「食料・農業・農村白書」は、この練習に持って来いの教材だと思います。
「農業高校生のお受験体験記」一覧を見る。
※ その年の「食料・農業・農村白書」の最新版は、7月頃に発行されるようです。
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