小論文の時間配分
以下の記事に、小論文の時間配分のことを書きました。
時間配分の例
以下の例は、上の記事で紹介した時間配分です。
O大学の小論文試験は「90分間」なので、それに合わせています。
この記事では、それぞれの時間配分の中で、実際にやることを説明します。
それぞれの時間配分の中でやること
例題をもとに説明した方がわかりやすいので、O大学の2015年度の小論文試験に出題された、以下の問題を例に説明します。
問題
表1は我が国の耕地面積や農業就業人口等の40年間の推移を、表2は日本と欧米諸国の1戸当たりの農地面積を比較したものである。このような状況において、日本政府は、農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増し、農産物の輸出を拡大させていく成長戦略を打ち出している。この政策の中心のひとつが、「担い手への農地集積推進事業」による農地の規模拡大である。
今後、日本でも農業がますます大規模化する可能性がある。
- 表1をもとに、わが国の農業がかかえる問題点を400字程度で説明しなさい。
- 表2において、( )にあてはまる適切な数値(四捨五入して小数点以下1位まで)を求めなさい。
- 農業規模(農地規模)が大規模化することの利点と欠点を指摘した上で、あなたが考える日本農業のあるべき将来像について、600字程度で述べなさい。
上記問題の中の表は、以下の農林水産省のホームページから引用しています。
問題文の内容を読み解く:10分
ここでは、問題文で求められていることを正しく把握するために、以下のことをします。
- 問題文で求められていることに下線を引く。
- 問題文の中で、ポイントとなるキーワードにマークをする。
- 表やグラフの中で、着目するデータにマークをする。
- 上記キーワードや着目するデータの関係性が分かるように、それぞれを線や矢印で結ぶ。
- 書き込んだマークや線、矢印に対し、思いついたことをメモしておく。
では、実際の問題に対し、上記のことをやってみましょう。
問題文の下線やマーク、表に追記したマークやメモに着目して見てください。
問題
表1は我が国の耕地面積や農業就業人口等の40年間の推移を、表2は日本と欧米諸国の1戸当たりの農地面積を比較したものである。このような状況において、日本政府は、農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増し、農産物の輸出を拡大させていく成長戦略を打ち出している。この政策の中心のひとつが、「担い手への農地集積推進事業」による農地の規模拡大である。
今後、日本でも農業がますます大規模化する可能性がある。
- 表1をもとに、わが国の農業がかかえる問題点を400字程度で説明しなさい。
- 表2において、( )にあてはまる適切な数値(四捨五入して小数点以下1位まで)を求めなさい。
- 農業規模(農地規模)が大規模化することの利点と欠点を指摘した上で、あなたが考える日本農業のあるべき将来像について、600字程度で述べなさい。
小論文の組み立てを考える:30分
問題文を正確に把握したら、次は、小論文の組み立てを考えます。
ここでは、以下の手順で、小論文全体の構成を考えます。
このステップの出来栄えが、最終的な小論文の完成度を決めます。
以下の手順をしっかり理解して、しっかりとした小論文の組み立てを作りましょう。
- 問題文の指示に沿って、小論文に盛り込むテーマの数を決め、その内容を「見出し語」で表す。
言い換えると、小論文全体の「目次」を作る作業です。 - 問題文を読み解く際に書き込んだ下線やマークや線、矢印を「見出し語」と結び付ける。
- 「見出し語」を1行の「見出し文」にする。
- 「見出し語」+「見出し文」の並び順を決める。
- 「見出し文」どうしの関係を考え、「見出し文」の前に付く「接続詞」を決める。
事前に「接続詞」を決めておくのは、かなり強力な効果があります。
以下の「接続詞」の例と使い分けを参考にしてください。
「接続詞」の例と使い分け
順接・因果:だから、したがって、ゆえに、そこで
逆説:しかし、けれど、ところが、だが、とはいえ
並列・付加:そして、また、さらに、加えて、および
補足・説明:つまり、すなわち、なぜなら、たとえば、要するに
対比・選択:または、あるいは、そのかわり、むしろ、一方、もしくは
転換:さて、ところで、次に、では
「見出し語」+「見出し文」は、最初は、数や順番は意識せず、思いついたものをどんどん書き出します。
絞り込みや順番の並び替えは、その後でやりましょう。
上記の手順でまとめた、小論文の構想を示します。
以下の構想の「見出し語」や「接続詞」に着目して見てください。
文字数の目安もメモしました。
- 表1をもとに、わが国の農業がかかえる問題点を400字程度で説明しなさい。
【問題点① 耕地面積の減少】⇒ 100字くらい
「耕地面積減」
1965年:600万ha → 2005年:469万ha(22%減)。
「合わせて」
「耕作放棄地増」
1975年:13.1万ha → 2005年:38.6万ha(約3倍)。
【問題点② 農業従事者の減少】⇒ 300字くらい
「総農家数減」
1965年:566万戸 → 2005年:285万戸(半減)。
「それに伴い」
「農業就業人口減」
1965年:1,151万人 → 2005年:334万人(71%減)。
「深刻なのは」
「基幹的農業従事者減」
1965年:894万人 → 2005年:224万人(75%減)。
「しかも」
「急速な高齢化の進行」
2005年:65歳以上の高齢者が、基幹的農業従事者の6割近くを占める。
- 表2において、( )にあてはまる適切な数値(四捨五入して小数点以下1位まで)を求めなさい。
3423.8 ÷ 1.8 = 1902.11 ⇒ 1902.1倍
- 農業規模(農地規模)が大規模化することの利点と欠点を指摘した上で、あなたが考える日本農業のあるべき将来像について、600字程度で述べなさい。
【利点】】⇒ 150字くらい
「大規模農業の利点としては」
「機械化」
生産効率が上がる可能性がある。
人手不足を補うことができる。
「合わせて」
「コストダウン」
必要な原料や資材を大量購入したり、物流をまとめることができ、コストが下げられる。
「さらに」
「直接販売」
小売りや消費者に直接販売でき、自分の農産物のブランド化ができる。
【欠点】⇒ 150字くらい
「一方、欠点として」
「必要なリソースの増大」
必要な資金や資本、人手が増える。
「農業を大規模化しても」
「農地分散は逆効果」
農地が分散すると、逆に生産効率が下がる。
「さらに」
「一か所集中のリスク」
一か所に集中することにより、病虫害が伝染病のリスクが高まる。
「農業の大規模化の裏で」
「小規模農家の淘汰」
小規模な農家が淘汰され、農業の多様性が損なわれる。
【あるべき将来像】⇒ 300字くらい
(打消し線の部分は文字数オーバーにより割愛することにした)
「あるべき将来像として、まず」
「農地を分散させない」
隣接した農地を寄せることで、農地が分散しないようにする。
⇒ 耕作放棄地を預かったり、農地の交換を斡旋したりする公の機関が必要。
「農地の集約を図る一方」
「一か所集中のリスクに配慮」
同じ作物、畜産品が1か所に集中し過ぎないように、計画的に全国に配置する。
「加えて」
「物流インフラの整備」
物流のインフラ(倉庫や保冷施設、道路や鉄道、輸出のための空港や港)を整備する。
「大切なのは」
「大規模農業経営の推進」
大規模農業経営しやすい制度(株式会社化、法整備、金融制度)を作る。
⇒ 隣接した農地を持つ複数の農家が集まって、株式会社化する。
⇒ 多くの資金や資本、人手を集めやすくする。
⇒ 労働環境(労働時間、休日のとりやすさ、3K)を整え、若い世代を農業に呼び込む。
⇒ 経営と農作業の分業化を図りながら、有能な農業経営者を育成する。
「農業の大規模化を進めながらも」
「小規模農家への配慮」
こだわりを持って質の高い農業をしている小規模農家への配慮も必要。
⇒ 生態系の面からも多様性は必要。
⇒ 消費者の多様なニーズにも対応することは大切。
解答用紙に小論文を清書する:30分
では、先に決めた小論文の組み立てに沿って、実際に小論文を書いてみましょう。
事前に組み立てがしっかりできていれば、小論文の文章を書く作業は、組み立てに沿って「見出し文」をつなげていく作業になります。
多少、文章の表現を工夫したり、記述内容を膨らませたりしますが、それほど時間はかからないはずです。
- 表1をもとに、わが国の農業がかかえる問題点を400字程度で説明しなさい。
- 表2において、( )にあてはまる適切な数値(四捨五入して小数点以下1位まで)を求めなさい。
答え 1902.1倍
- 農業規模(農地規模)が大規模化することの利点と欠点を指摘した上で、あなたが考える日本農業のあるべき将来像について、600字程度で述べなさい。
小論文を推敲する:20分
最後に、清書した小論文を見直し、表現の修正や訂正、推敲をします。
- 読み直して、気になる個所の文章表現を修正する。
- 文章表現の変更に伴う、文字数や段落の調整を行う。
- 誤字脱字がないか確認し、間違いがあれば訂正する。
まとめ
以上、今回は、実際の小論文の問題を例に、それぞれの時間配分の中で、実際にやることを説明しました。
- 問題文の内容を読み解くこと。
- 小論文の組み立てをしっかり考えること。
ができれば、
- 解答用紙に小論文を清書すること。
は、それほど難しいことではなく、時間に追われることもありません。
さらに、
- 小論文を推敲する。
時間も十分に確保できるはずです。
ちょっと、長く複雑な記事になりましたが、この手順を反復練習すれば、まとまりのある高いレベルの小論文を書けるようになります。
お薦めの書籍
後日、以下の「まんがでわかる 理科系の作文技術」を読みました。
以下の書籍を読む方と,文章を書く上でのポイントがよりしっかり理解できると思います。
ストーリー仕立てのまんがなので読みやすく、2時間かからずに読み通せるので、是非とも、読んでおきたい書籍です。
電子書籍版もあります。
オリジナルの書籍は、以下の「理科系の作文技術(中公新書)」です。
100万部を超える名著です。
こちらも、電子書籍版があります。
「農業高校生のお受験体験記」一覧を見る。
コメント
自分は県立農業高校三年生で、今期の11月末に国立大学入試を受けます。夏休みも終わり、残り時間が少なくなってきて焦りと不安などネガティブ思考になっています。そこで、今回このようなサイトを見つけ、合格するためには努力しかない!と思い、意識を変えることにしました。このサイトで書かれていること、筆者様がおっしゃりたいこと、すごく共感しました。ためになるお話、ありがとうございます!!
残りの時間を大切にし、頑張っていきたいと思います!
扇原さん
このブログが何かのきっかけになればうれしいです.
受験勉強頑張ってくださいね.
あと,林先生が昔のテレビで話していた内容,今見ても参考になります.
くじけそうになったときに見てみるといいかも.
https://www.youtube.com/watch?v=mQP0vGPp5BU